2025年7月1日、タイ憲法裁判所は、ぺートンタン・チナワット首相を一時的に職務停止とし、スリヤ副首相を暫定首相にすることを決定した。これは、先般発生したカンボジアとの国交での軍事衝突に関して、カンボジアのフン・セン上院議長(元首相)と行った電話会話を巡る問題に関し、上院議員36名が提出した訴えを受理した結果だ。問題となった電話会話の内容は、ペートンターン首相が、タイ第2軍管区(カンボジア国境の防衛部隊)司令官を「敵」と呼ぶなどの発言をし、一方、カンボジアのフン・セン氏に対しては、「従順すぎる」態度を見せ、軍内部から強い反発があり、国家の主権や軍の士気を損なったと批判されている。対象となった地域は、サケーオ県からウボンラーチャターニー県までの係争地帯(国境未確定地)を含み、極めてセンシティブな地域だ。憲法裁判所9人の裁判官のうち7対2の賛成多数で職務停止を決定。根拠となった憲法条文は、第82条(議員の資格停止や職務停止を求める手続き)、第160(4)(5)(首相・閣僚の資格に関する規定(誠実性、倫理基準))、第170条(閣僚の地位終了の条件)。ぺートンタン氏は前日に国王の裁可を受けた新内閣名簿に基づく文化相の地位は維持される。スリヤ副首相が、暫定首相として業務代行中。ペートンタン氏は、「国境での衝突と犠牲を避けるために電話をかけた。悪意はなかった」、「私の行動が多くの方にとって納得できなかったのであれば、お詫びします」と釈明した。ペートンタン氏には15日以内に釈明書を提出するよう命じられており、裁判所が最終判断を下すまでは、首相職への復帰はできない。今回の決定は、政権の安定性と外交関係、特にカンボジアとの関係に大きな影響を与える可能性がある。【ここがポイント】首相の電話会議の内容が漏出する、しかも、電話の相手方カンボジアの権力者・フン・セン氏から公開されたことには驚きました。フン・セン氏は、ペートンタン首相の父であるタクシン氏と親密な関係を築いてきており、両者の間に何か大きな問題が発生したことを意味してます。それがタイの政治と結びついており、今回の憲法裁判所の決定となったと思われます。来週に予定されているカジノ法案の国会採決も延期の見通しとなってますが、今後のタイ政治の動きは要注意です。