広汽集団傘下の中国の電気自動車(EV)メーカー、広汽汽亜イオン(GAC Aion)は7月17日、タイに初の工場を開設した。バンコクの東約180キロにあるラヨーン県の工業団地での工場の落成式で、広州汽車グループの曽慶宏会長は「われわれはタイのEV生産を支援し、タイを東南アジアのEV産業の中心地として推進する」と述べた。タイは何十年もの間、トヨタ自動車やいすゞ自動車などの日本のメーカーが支配する地域の自動車生産ハブだった。しかし、中国のEVメーカーが14億4,000万米ドル以上の投資で市場に大きく進出し、日本企業に挑戦している一方で、タイの消費者も政府の補助金や税制上の優遇措置のおかげでEVを購入し始めている。政府は、2030年までに年間250万台の自動車生産台数の30%をEVにすることを目標としている。GAC Aionの23億バーツ(6403万ドル)の施設は、毎年5万台の車両を生産できる。新工場は、ライバルの中国のEVメーカー比亜迪汽車(BYD)がタイに工場を開設した数日後完成した。タイにおける中国系EVメーカーの急速な拡大は、日系自動車メーカーにも影響を与えている。スズキは先月、年間6万台もの自動車を生産していたタイの工場を閉鎖すると発表した。日本第2位の自動車メーカーである本田技研工業は先週、タイにある2つの工場を1つの工場に統合すると発表した。 【ここがポイント!】タイの国内自動車生産設備能力は約200万台(政府の2030年見通しは250万台)ですが、2023年実績では、生産台数約180万台、その内、国内販売75万台、輸出105万台となってます(FTI統計)。国内販売の内、一般乗用車は29万台、トラックなどの大型商用車を除く1トンピックアップなどの小型商用車(ディーゼルエンジン)は32万台です。小型商用車の販売シェアーが大きいのがタイ市場の大きな特徴です。バンコクなどの都市部ではガソリン車に交じってEVが見られる機会が多くなりましたが、郊外にでると小型商用車が圧倒的に多いです。中国EVは、タイ国内では都市部の乗用車のシェアーを狙っていくと思われますが、充電インフラの整備、ローンや保険の問題などあり勢いは若干翳っています。しかし新たな中国EVメーカーの工場開設も計画されているので日本車の牙城であるタイ市場への影響は必至と思われます。米中摩擦深刻化の中で中国EVメーカーは輸出拠点として位置付けているとも考えられその動きは加速していくものと思われます。