5月28日早朝、タイ東北部ウボンラチャタニ県のナムユーン郡にある国境の係争地で、タイ軍とカンボジア軍の間で銃撃戦が発生した。カンボジア国防省によると、この銃撃戦でカンボジア兵1人が死亡した。カンボジア側は「タイ軍が先に、長年カンボジア軍の拠点だった塹壕(ざんごう)を攻撃した」と主張。一方、タイ側は「カンボジア兵が係争地で塹壕を掘り、撤退を求めたが発砲されたため応戦した」と説明している。銃撃戦は約10分間続き、タイ側に死傷者はいなかった。両国の現地司令官はその後、電話で協議し停戦に合意しましたが、依然として両軍の兵士が現地に残っている模様。2度目の塹壕掘削だったとタイ国防相は説明し、さらなる衝突を避けるため双方の部隊に慎重な対応を指示している。なお、両国の国境では以前から係争が続いており、2011年にはプレアビヒア寺院を巡って激しい戦闘が発生したことがあった。最近では2月にも別の寺院で小規模な衝突が起き、5月に両国が撤退に合意したばかりだった。【ここがポイント】タイとカンボジアの国境は、19世紀から20世紀初頭にかけてカンボジアの宗主国だったフランスが国境線を曖昧に引いたことから幾つかの地点で国境が確定せず紛争の場となっています。また海上の排他的経済水域(EEZ)・大陸棚の境界も完全には確定していません。特に石油・天然ガス資源が埋蔵されている可能性の高い海域(共同開発水域、Joint Development Area候補)を巡って、長年協議が続いています。タクシン元首相はカンボジアのフン・セン元首相(現首相の父親)と緊密で、タクシン元首相が亡命先から帰国後、海上における二か国の資源開発が進む動きが出ていました。今回のウボンラチャダニでの軍事衝突はこの動きに水を差しかねませんが、軍の動きはタイ国内の政治と関連することが多く、タイの複雑な事情を反映しているかもしれません。